一九七二年の札幌冬季五輪の競技会場が、老朽化や運営費不足で危機的状況にひんしている。札幌市南区真駒内の屋外スケート場は二月の電気料金の負担が重く、一月末で今季の供用をやめる。リュージュの練習会場(予備コース)だった南区藤野のコースは千メートルのうち、七百メートルを維持するのがやっと。施設を管理してきた道や札幌市は財政難で改修したり、維持・運営費を増額したりする余力がなく、このままでは施設の存廃論議が起きる可能性もある。
真駒内の屋外スケート場は二○○七年四月、道が命名権(ネーミングライツ)を売却したことで、道立真駒内公園屋外競技場から真駒内セキスイハイムスタジアムと名称を変えた。
○六年四月からは北海道体育文化協会が指定管理者として、屋内リンク(真駒内セキスイハイムアイスアリーナ)とともに施設を運営している。関係者によれば、リンクの維持・管理などに伴う電気代は月契約で、二月も開けると、八百万円ほど経費がかさむため、供用を一月末までとする。
二月以降は一般滑走などができなくなるが、札幌スケート連盟の畑中弘理事長によると、競技団体も「資金協力したくても、力がない」。今の苦境が続けば、一○年二月に開催予定のスピードスケート北海道選手権を開けない恐れもある。
道は○五年度まで、同協会に、屋内外のリンクの管理、運営委託料として二億七千万円を支出してきたが、指定管理者制度に移行した昨シーズンからは、負担金をほぼ半額に減らした。同協会が屋内外のリンクで、収入源を探すにも限界があるという。
札幌市が管理してきた藤野のリュージュコースも施設の老朽化が著しく、安全上の理由から七百メートルしかコースを使用できない。コースを人が横断するための鉄橋もさびがひどく、競技団体は改修を望むが、市が支出したのは、さび止めのペンキ代だけ。札幌リュージュ連盟の伊藤徹理事長は「北海道のリュージュの灯が消えかねない」と、危機感を募らせる。
また、五輪でフィギュア会場となった美香保体育館も「通年使用が困難」など、さまざまな問題を抱えている。
札幌市がリュージュコースや美香保体育館など、冬季競技の施設を維持するために支出している補助金は年間三億五千万円。担当者は「問題のある施設が多いことは認識しているが、改修や維持費を増額する財政的な余裕はない」と説明する。
こうした施設は五輪当時、半ば国策として整備された。だが、文部科学省は「スポーツ施設は自治体の所有。国が施設を整備、改修することはできない」としており、各施設を覆う暗雲は濃くなるばかりだ。
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